「ほんとに?」
ママはベットメイキングの手を止めて、ぼくを見ている。
うん。
間違いないと思う。
ぼくたちがここに引っ越してきたころ、
ぼくは慣れない家で、怖くて、引きこもっていた。
そんな時、出会ったのがトラさんだった。
「なーちゃんの恩人だからなぁ。
あたしもご挨拶しないと」
ママは嬉しそうに微笑む。
でもね、でもね。
ぼくは、言い淀んだ。
なに?とママはぼくを見つめる。
なんか、すごく、おじいちゃんになってて。
ぼくは動揺していた。
あの、トラさんが、傷だらけで、首も毛が薄くなっていた。
傷だらけという事は、誰かと戦って負けた、という事だ。
「うーん。あれから五年かぁ。
なーちゃんだって歳とったし
あの頃ずっと年上だったトラさんは
もっと歳とっただろうし。
そして今、ジャックが全盛期だし、
鉢合わせないと良いけど」
ママは難しい顔をする。
ぼくも心配になった。