ゆっくり生きてる

シロちゃんしか居なくなった水槽は
広々しててすごく静か。
シロちゃんもあんまり動かないし。

尻尾も赤いし、背びれも畳んでいる。
具合が悪そうに見えるけど、ママは首を振った。

「ピチピチって訳じゃないけど
 穏やかに暮らしてるわよ。
 誰もいなくて寂しいかな、と思ったけど
 静かでいいのかも。
 例えばうちにさ、夫婦二人で寂しそうだから
 赤ん坊をプレゼント、って言われても
 げー、って感じじゃない。
 今のあたしたちに赤ん坊なんて来たら
 こっちが具合悪くなっちゃう。
 タイミングってあるし。
 シロちゃんも若い時はデッカちゃんと鯉ちゃんと
 若々しい付き合いしてたんだもん。
 今はゆっくり一人で過ごしたい時期なのよ。
 歳を取って動かないのは病気じゃないもの」

昼間は調子いいもんね、とママは水槽をコツコツ叩いた。
シロちゃんは、そうだよ、と言わんばかりに右ひれを振る。

まぁ確かに。
ぼくも昼間は一人でいるけど、別に寂しいと思ったことはない。
それこそ子猫と二人にさせられたら昼寝もできない。

もうゆっくり生きていいころなのよ、って
ママは笑っていた。


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