ぼくは寝てるしかできないけど

ところでさ、お店は大丈夫なの?

ぼくはママに尋ねた。
ばぁちゃんと、思い切り遊ぼう、っていうのはわかったよ。
でもさ。
パパも仕事してなくて、ばぁちゃんも仕事してなくて
ママも、なんて。
ぼくは寝てるしかできないんだ。
心配になった。

「あら。なーちゃんはそこ、聞いてくれるの?」
ママはぼくの額をつんつんする。

「ほんと、お客さんに恵まれてて。
 急遽予約の時間の変更をお願いしても
 いいよ、って言ってくれるんだ。
 そんなこと、商売しててあり得ないんだけどね」

ママは遠くを見つめた。

「お店は閉めない。
 でも帰らなきゃいけないときもある。
 そこをわかってくれ、なんて図々しいわよね」

ははは、とママは力なく笑った。

ぼくは先日、ママがじぃちゃんと電話で話しているのを
漏れ聞いてしまったんだ。
じぃちゃんは、ばぁちゃんやママやパパの心配はしていなくて
オレの年金使い込んでないだろうな
って言ってきた。
その時、部屋の温度がスッと下がって
ママは氷のような目をしていた。

「ご心配なく。一銭も手を付けていません」

と言ってママは電話を切った。

「なーちゃんが寝てるときに、結構働いてるから
 あんたは心配しないでいいの」

ママはぼくのほっぺを左右から引っ張った。

「パパも無職とはいえ、土日だけ先輩のお店に手伝いに
 行ってくれてるでしょ?
 少ないとは言え3ヶ月は失業保険もおりるし
 ママもお店と家を行ったり来たりしながら
 なんとかお客さんに迷惑かけないように
 がんばる。
 これで行けるところまで行ってみようよ」

ぼくのほっぺを放したママの手に、鼻をくっつけた。
夕飯の後片付けを終えたママの手は
洗剤のにおいがする。

ママは朝お店に出かけ
お昼に家に戻ってばぁちゃんとご飯を食べて
またお店に戻って
15時ごろまた家に戻って
またお店に戻って、
夜に帰ってくる
って感じだったので
すごく日に焼けてた。
そして、ちょっと痩せた。
ばぁちゃんほどじゃないけど。

「パパがいないときに
 あんたがばぁちゃんと一緒に
 お昼寝しててくれて
 けっこう助かってるのよ」
と言うと、ママはウィンクした。


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