ぼくの知らなかったこと

今日はママのお休みの日。
パパはハローワークに手続きに行っている。
ぼくは玄関の段ボールに入った。
ママが隣のソファに腰を下ろす。
このソファはママが一人で暮らしていた時に使っていた物で
リビングで使うにはヘンテコだ、と言って
玄関に置かれている。
ぼくのベッドにもなっているんだけど。

「パパと一緒に居る時間が増えて、嬉しいでしょ」

ママは段ボールのぼくに話しかけた。

うーん。
まぁね。
ちょっとしつこい時もあるけど。

あはは、よくわかる
とママは声に出して笑う。

「さて、パパはここからが本番、だものね。
 去年はほんとに人生の夏休み、ってしちゃったし。
 勤めてたところ、合わないんじゃないかな、って思ってたしね。
 だってあのパパがワイシャツ着て仕事してるのよ?
 ワイシャツって、料理の染みつける服じゃないじゃない。
 洗濯してアイロンかけるこっちも困りますし」

ママはばぁちゃんの様子を見ながら
よくアイロンがけをしていた。
そのたびに、
ぎゃぁ、これ落ちてない
イカ墨??
って叫んでた。

「最後の盛り付けだけする人はいいと思うよ。
 ワイシャツの上に白衣着て、お客さんの前で披露する、みたいのは。
 でも料理ってそうじゃないじゃない。
 汚い仕事も多い。
 血がついて、油もついて、下手したら毒もついて、って世界よ。
 パパがコチの毒刺さった時なんてどうしたと思う?」

コチは歯に毒があるってパパが言ってた。
噛まれたの?

「そうそう。活ジメするからね。
 コチだって必死だもん。抵抗されて。
 でもパパ苦しまないように一瞬で、って頑張ったんだけど
 噛まれて。
 で、なんと目に毒消しがあるのよ、コチって。
 目玉取って、噛まれたところにグリグリ~って塗るの」

えー!
パパ大丈夫だったの??

「お陰様で腫れなかったのよ」
ママはぼくの額を突っつく。

「そんな格闘しながらワイシャツ汚さないように、なんて無理だよ。
 さて、どんなお店探してくるのかな。
 楽しみだね」

ぼくの知らないところで、パパはお魚と戦っていた。
知らなかった。
しつこいパパを思い浮かべる。
ちょっと我慢して
もう少し、つきあってあげようかな。


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