ぼくとばぁちゃんの内緒話

すっかりばぁちゃんの部屋になった和室。
ばぁちゃんと一緒に暮らし始めて2ヶ月半になっていた。
それまではパパとママが寝る部屋だったけど
今二人はリビングに布団を引いて寝てる。
この間に、ここに来たのは
ばぁちゃんの妹と、ママのお兄さんが病院の送り迎えに一度来たくらい。
じぃちゃんにも、ママのお姉さんにも会ったことがない。

ぼくは昼間、ばぁちゃんと話したことを思い出していた。

ねぇばぁちゃん。
ぼくはテレビでしか知らないんだけど
病気の人は病院に行って、入院とかするんじゃないの?

「そうね。そうする人は多いと思う」

ばぁちゃんは、いいの?

ばぁちゃんは、くすり、と笑ってぼくを膝に乗せた。

「治るものなら、ばぁちゃんだって頑張るけどね。
 治らないのにずっと病院のベッドに居るなんて、嫌だったの。
 ここの二人にも、このみにも迷惑かけるけど、来ちゃった」

ぼくの頭をなでる。
ばぁちゃんの手はとても細くて小さくて、
パパがなでるときの様にぐいぐいしたものじゃなく、
とてもおぼろげな感じだった。

「ついこの前まで、ばぁちゃんは車も運転してたし
 小学校で給食作ったりしてたのよ。
 汗だくになって。
 でも痩せなかったわね。
 今は勝手にジャンジャン痩せて、どうなってるのよ、って思うくらい。
 でも、元気な時にこのみに会いたかった、なんてことは言わないわ。
 今、こうして一緒に居れるんだから」

ばぁちゃんは目を細めた。
ぼくも一緒に目を細める。

じぃちゃんとか、ママのお姉さんとかお兄さんとか
会わなくていいの?

「会ってはいるわよ。病院に行ったときに。
 でも皆、なんで治療しないの、とか
 頑張って生きて、とか
 ガンと戦って、とか
 生きるのをあきらめないで、とか。
 とにかく病院に世話になれ、って感じじゃない。
 ばぁちゃん、そういうんじゃないのよ。
 これでも必死で生きてます。
 自分の生命力だけで、行けるところまで行こう、って思ってるの。
 それが寿命だと思っているのよ。
 でもこのやり方を受け入れろ、って普通の人は無理じゃない。

 ケンカしたいわけじゃないの。
 だからまだ動ける内は、付き合って診察に行ってるんだし。
 抗がん剤も、打ってる。
 まったく何にも面倒見せなかった、ってなると、残った人は後悔が出てくるでしょ?
 多少は面倒見てもらって、でも最後は死にたいように死にたいの。
 それをここの二人は受け止めたのよね。
 我が娘夫婦ながら、あっぱれよ」

ばぁちゃんは、あはは、と声を出した。

笑ったのかなと思ったけど
泣き出しそうな顔をしている。

ぼくは背伸びして、ばぁちゃんの顔を触った。


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