ぼくとばぁちゃんに見えるモノ

あららら?
ちょっと、このみ、見える?

ばぁちゃんがぼくを呼んだ。

ぼくが振り返ると、ローソファーに座って足を伸ばしているばぁちゃんが
困った顔して手招きしていた。

これ、ばぁちゃんにだけ見えてるのかな。
ガンが頭に転移して、おかしくなったのかな。
とばぁちゃんは首を傾げた。

今日もオフなの、と言ってテレビを見ていたパパも振り返る。
パパの顔にはハテナが浮かんでいる。

ぼくはばぁちゃんの足を見た。
そこには薄ぼんやりと
数人の人が入れ替わり立ち替わり、居た。

ぼくとばぁちゃんは顔を見合わせ、
居るね、居るよね、とうなずき合った。

声は聞こえないけど、その人たちは懸命に口を動かして
何かを訴えている。
大きさも様々で
子供も大人も。
誰なのかはわからない。
だけど現代の人じゃないことは分かった。

ばぁちゃんの知り合い?と聞くと
ばぁちゃんは首を横に振った。

パパは自分にも見えないかと、写真を撮っている。
なにも映らない。

「ぼく、お経読めるんで、唱えてみます」
と言うと、パパは般若心経を唱えだした。
いつもニコニコ、ボヤボヤしているパパが
真面目な顔をして手を合わせて、聞いたこともない言葉を発することに
ぼくは驚いた。
ばぁちゃんも驚いている。

でも何も変わらない。
数人の人は、ばぁちゃんの足先から膝まで
わらわらと映し出される。

パパは携帯に手を伸ばして
仕事中のママに電話をかけた。

ママちゃーん、お義母さんが足にいろんな人が見えるって~
どうしよう~
ひーん

数十分後、ママはゼィゼィ言いながら
玄関のドアを開けていた。

「で、具合は?」
とばぁちゃんに声をかける。

うーん
別に痛くも苦しくも嫌な感じもないんだけど
と、ばぁちゃんは苦笑いをして、ぼくに、ねぇ、と同意を求めた。
ぼくも、変な感じはしないよ、とママに伝える。

ママは、目を閉じて腕を組んだ。

翌朝、ママはばぁちゃんが起きるとリビングに呼んで
ちょっと、自分で話付けてくれる?
とソファに座らせた。
テーブルには三件分の、お水と、線香が焚かれている。
あたしも言いたいことあるからさ、と言うとママもばぁちゃんの正面に座った。

ぼくは行司の様に二人を見渡す。
二人はしばらく手を合わせて、瞼を閉じていた。
お線香の煙だけが、ゆらゆらと部屋に流れる。

ばぁちゃんが目を開けて、いい香りね、とつぶやいた。

ママがキッチンに片付けに行ったとき、ぼくは尋ねた。
ママは誰に何を言ったの?って。

「ここはパパの家だからさ。
 パパ、今就職活動中でしょ?
 パパのお義父さんに協力してください、ってお願いしてたのに
 なんだかうちのじぃちゃんの先祖だかなんだかが
 ばぁちゃんに、自分だけ成仏しないでー、ぼくたちどうすればいいのーって
 寄ってきてる感じだったから、じぃちゃんと兄貴のところに行くべきでしょ!って。
 あと、ばぁちゃんのお父さんとお母さんが様子見に来てたから
 見舞いだかお迎えだかはっきりしなさいよ!って。
 パパのお義父さんには、あやまってさ。
 まぁ、私の妄想だけど」

いやいや、ママ、見えてたの?

ぼくはちょっと関心した。


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