「どう?寂しかった?」
ママはぼくに尋ねる。
ぼくは首を振った。
そうでもなかった。
トラさんにはぼくと出会った頃の記憶はないかもしれないけど
なんか、昨日のトラさん、可愛かったな、って。
「そうだね。トラさんはトラさんだし。
でもトラさんって感じじゃなくてトラちゃんって感じ」
ママはクスリと笑う。
そうだね。おじいさん、って呼ぶより、おじいちゃん、って呼ぶ方がなんか仲良しな感じだよね。
ぼくはそのちょっとの差を気に入る。
「ね。ニュートラさんだよ。
トラちゃんは温厚だからね。
頑固じじいじゃなくて良かった」
あはは、とママは笑っている。
でもあちこち剥げちゃってるけど、大丈夫かな。
ぼくはそれが心配だった。
「まぁ、湿疹で毛が抜けちゃってるけど
年齢にもよるのかも。
年を取るって、こういうことなんだね。
あたしもトラちゃん見習おう。
年を取れば、どうしても見た目が悪くなっていくもの。
でも温厚で、いつもニコニコしてれば可愛く見えるものね」
ママは、うん、とうなづいて
笑顔って大事だね、と言った。
ねぇ、ぼくが剥げても可愛いって言ってくれる?
ぼくは小さな声で聞いてみた。
ママは、もちろんよ、と応えて
私が~おばさんになぁても~♪
と歌いだした。