ぼく、禿げました

ねぇ、ママー

ちょっと、来てー

ぼくはママの真似をして声をかける。

ねぇ、ちょっとー

「なによ、なーちゃん。
 今、ご飯作ってるんだって」

ママは顔を上げずに返事する。

いいから、ちょっとちょっとー

「はいはい。
 なによ。
 忙しいんだって。
 でもいつも、なーちゃん来てくれるから
 あたしもお答えしなくては」

き、とママは蛇口を上げる。

ぼく、見て欲しいものがあるの。
こっち来て座って。

ぼくはコタツへ誘導する。

「えぇー
 コタツ入ったら、動きたくなくなるじゃん」

ママはぶつぶつ言いながら、やって来た。

いいから、座って座って。

はいはい、とコタツに座るママの膝に乗る。

「えぇぇぇ
 呼んでおいて寝る、ってどういう事よ」

ママは仰け反っている。

では。
お見せしましょう。

じゃん。
ぼく、頭痛いの。

「えー!
 あんた何したの!?
 剥げてるじゃない!!」

ママは目玉を丸くしてぼくの頭をつかんだ。

やっぱり?
剥げてる?

「血、出てるし!
 あんた、昼間一人で何してるのよ!
 クラクラしない?
 大丈夫?」

うん。

ママは消毒薬と化膿止めの薬を取ってきて
ぼくの頭に塗った。

たぶんあの時だろう、と思うけど
ぼくもよくわからない。
原因はどうあれ、剥げてしまったことに
ちょっと、落ち込む。


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