ぼく、かすがい

「あーあ。
 まったくさー」

ママが座布団を持って、ぼくの隣にやってくる。
今日は庭を見ながらのお茶会らしい。

「ちょっとひどいと思わない?」

うーん。
まぁ、ぼくもそう思ってたけど。

ママは座布団に座り、ため息をついた。

昨日、パパとママは珍しくケンカをし、
パパは、そんなつもりはない、謝らない、の一点張りだった。

ぼくが見ている限りでは、
パパはママの事が嫌いじゃないし
ママもパパの事は嫌いじゃない。
でもケンカになるんだね。

「あたしだって、お礼を言って欲しくてやってきたわけじゃないの。
 でも、あまりにも勝手じゃない?
 なんでもあたしがやるのが当たり前みたいで」

パパの休みはクルクル動いて、
ママもいい加減、休みを合わせることを辞めて、
パパは休みの合う職場の人と遊びに行くようになって
ママはお店の時間を短縮して早く帰ってくるようにして
なるべく家に居る時間を作ってきたけど
2人は夕飯を食べたらすぐに寝て、
つまりは起きて二人で一緒に居る時間は、なくなってた。

「あたしは付き合いも仕事も全部最小限にして
 家事に回っているのに
 パパちんは遊ぶ時間が増えてるわけでしょ?
 それも何の話もなく、
 ゴルフ行っちゃって、その後釣りにも行っちゃって
 スマホの電池が切れて、連絡も付かないままで
 帰ってきてもゲームしてて
 職場の女の子にきんぎょずの写真送ったりしてて
 なんだ、そりゃ、って思わない?
 もう、朝一緒に早く起きてご飯の用意しないからね、って言ったら
 頼んだ覚えはない、って。
 どうしちゃったの、パパちん」

ママは頭を振る。
離婚
という文字が顔に浮かんでいる。

うーん。
待ってよママ。
確かに、パパは今、ぼくもママもいないところで楽しくやってる。
でもそれは悪い事じゃない。
ちょっとぼくたち、パパから離れてもいいんじゃないかな。

「そうだね。
 あたしも自分のやりたいこと、やってようかな。
 パパちんにはもう、応援団は必要ないか。
 あたしが勝手にやってただけだもんね」

もう、あたしはいらないのか
ママは目を閉じて、お茶をすする。

ぼくは、パパがもう少し、
器用だったらよかったのにな、って思った。
このままじゃ、ママは勘違いしたまま
ここからいなくなる。
2人とも嫌いあってるわけじゃないのに。


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