「あら、なーちゃん。ひなたぼっこ?」
レースのカーテンを開けながら、ママがぼくを見つけた。
このレースのカーテンは、通常のものよりも厚いらしく
姿が透けて見えない。
ぼくは隠れていたつもりもなかったんだけど。
「なーちゃんのリクエスト通りでしょ。
日向ぼっこもちゃんとできます」
この家に引っ越してくる前、
ぼくはリクエストを出した。
そうそう。
こういう感じ。
日向の匂いっていいわよね、ってママは伸びをしながら
ほほ笑んだ。
日向の匂い?
くんくん。
「いや、そうじゃなくって。
お日様にあたった、なーちゃんの匂い」
そうなの?
「えー。
ちょっと、あんた、彫りの深い顔になってますけど」
ん?
なにそれ。
そして、数日の間
ママはぼくを阿部寛と呼んだ。