ばいばい、でっかちゃん

でっかちゃんが傾いたころ
パパが帰ってきて
きゃーって叫んで
急いでママに電話して
パパとぼくでオロオロしながら
水槽の周りをグルグル回って
ばん、って玄関が開いて
ママは口をへの字に結んで立っている。

「知ってる。でっかちゃんは今日までよく頑張った」

そんなに大きくない、ろ過装置の水流に
耐えられなくなったでっかちゃんを
プラスチックの板で止めてあげながら、ママは言った。

「ここ1週間で、グッと体力が落ちた。
 でもニワトリちゃんと鯉ちゃんと
 最後は一緒に居ようかな、って言ってさ」

ママはニワトリちゃんと鯉ちゃんを見つめる。
二匹も同様にママを見つめ返す。

「魚類はさ、どんなに苦しそうでも
 お薬を塗ってあげることもできないし
 抱きしめてあげることもできない。
 でも、ニワトリちゃんと鯉ちゃんが居てくれて
 よかった。
 ほんとうに傍に居てやれるのは
 彼らしか居ないんだよ」

あぁ、ぼく、もう見てられない。
パパと一緒にコタツに移動する。

パパと一緒になって目を閉じる。

「怖い事じゃない。
 見送ってやろうよ」

ママはぼくをコタツから剥がし
抱えて水槽まで連れていく。
パパは、くすん、と肩を落としたまま。

水槽の前に椅子を移動し、ママはぼくを抱えなおした。

「がんばれがんばれ、でーっかちゃん!
 がんばれがんばれ、でーかっちゃん!」

ママは応援を始める。

すいー、とでっかちゃんは横になった。

けむく、じゃら、ぞう、
まま、さん、
ぱぱ、さん、
たの、しか、った、よ、
にわ、とり、ちゃん、と、
こい、ちゃん、を、
よろ、しく、ね、
また、どこ、かで、すく、ってくれよ、

ぷくぷくぷくぷく

でっかっちゃんはほほ笑みながら
目の色が消えていく。

「がんばれがんばれ、でーっかちゃん!
 がんばれがんばれ、でーっかちゃん!」

ママは泣きながら声を張り上げる。
ぼくも乗り出して一緒に声を張り上げる。

「がんばれがんばれ、でーっかちゃん!」

ぷくぷくぷくぷく

もう、でっかちゃんの尾びれは動かない。

「オレが、庭に、穴掘って、あげるから」

気が付くとパパがぼくとママの後ろに立って
鼻をすすっていた。

ママは口を横に引き、黙ってうなずいた。


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