「はい、そこに隠れている人!
無駄な抵抗は止めて、出て来なさい!」
ママがメガホンを持って、叫ぶ。
そう、ぼくに。
ぼくは観念して、一歩前に出た。
「さっさと洗濯物を片付けろ、という無言の圧力には屈しない!」
ママがさらに声を大きくして、叫ぶ。
別に、そんな圧力かけてないもん。
ぼくは干されているパパのパジャマから移動する。
「今更隠れる必要ないじゃない。
何年一緒に暮らしていると思ってるのよ」
ぼくはママを見つめ返す。
だってさ、落ち着かないんだよ。
ぼく、猫型なんだし。
「まぁ、そうでしょうね。
とはいえ、暑くなってからじゃあんた干上がっちゃうでしょ?」
そうだけど。
寒くて隠れてるんじゃないもん。
かくれんぼ?
と聞かれて、ぼくは曖昧にうなずく。
「でもさー、なーちゃんの姿が見えないと
心配なのよ。
呼んだら顔出してよ」
ママは、うー、っと口を横に引く。
それくらいは、我慢してよ。
ちょっと意地悪で隠れてるんだから。
なにー!とママは目玉を丸くした。