ぼくはトラさんと出会って、ちょっと元気が出た。
トラさんって名前なのかはわからないけど
ぼくはそう呼ぶことに、決めた。
新しい家の匂いにも慣れて来たし
気が付けば、元々在ったものばかりで
知ってた匂いもいっぱい残ってる。
ママがそうしてくれたのかもしれないけど。
だからぼくはママにちょっかいを出す。
えいえい。
えいえい。
ママは何かのレシートを
机に並べて唸っている。
えいえい。
「あーもー。
止めてくださーい」
ママはぼくを、ぐーっと机の奥に押しやる。
それでも紙の端を押さえて、ぼくは抵抗した。
「あーもー。
元気になったのはいいけど、邪魔しないでよ。
カリカリのランク落とすわよ」
ママは、きっ、っとぼくを睨んだ。
おっと。
それは困る。
できればウェットなご飯もお願いしたい。
ぼくは大人しく、ママの膝に降りた。
「・・・。それはそれで邪魔なんだけどね」
ママはため息をついて、ぼくの頭を撫でる。