「母が使っていた敷布団を捨てないでよかったけれど」
ママが振り向いて何か言っている。
ぼくの隠れ家は釣り下がった洋服の下で
ばぁちゃんが使っていた敷布団に
カラカラのタオルを敷かれた場所だった。
タンスの影にもなって
部屋の隅で
最近はほぼここに居る。
「野良猫であれば人目のない所で休むんだものね。
そこを用意しておいて良かったけれど」
ママはため息まじりに話している。
パパもいないのに話しているって事は
ぼくに向かって言ってるんだろうけど
ぼくは返事をしない。
眠たいから。
「いつかそこで死ぬ気だろうけど
良い看取り布団だから
穏やかに逝けると思うよ。
良い場所を用意できて良かったけれど」
いいんだよ。
ママの言いたいことはわかってる。
隅っこは落ち着くし
PCで何か書いてるママの事も見えるし
ぼくにとってはここが終の棲家になると思う。
まだ先なのか、もう来るのか、
それはぼくにもわからないけど
いいんだよ。