「ねぇなーちゃん、見て見て」
ママがぼくに手招きしている。
なになに?
まどに近づくとジャックが見えた。
どうやら顔を洗っているようだ。
「ほっぺの泥はああして落とすんだ。
なるほど」
とママは呟く。
それにしても、と話をつづけた。
「猫なのだから当たり前なんだけど
猫背だね」
ママはジッとジャックを見た。
そりゃそうだよ。
足をあの位置に置いて手を地面に付いたら
腰は曲がる。
だからぼくたちはしょっちゅうストレッチをして
腰を伸ばす。
「猫背って頭が前に出ることではないんだな。
胸椎も頸椎も真っすぐだ」
ふーん、とママは感心している。
「と、言う事はだよ、腰が曲がっている人を
猫背と言うんじゃないのかね。
背中が丸まっている人ではなく」
ぼくは首を振った。
ぼくたちは伸びるもん。
腰が曲がった人は伸びないじゃない。
うーん、とママは唸っている。
「名称はあてにならないね」
と言うとジャックのご飯を用意しにキッチンに行ってしまった。