「おかしいんだよ。
摩訶不思議。
オレはそんな風に脱いだ覚えないんだよ」
パパがママにうったえている。
「あたしじゃないわよ。
だいたい自分の脱いだ靴、ちゃんと見てないじゃない」
ママは、知らん知らんと首を振っている。
取っ散らかってるのはいつもの事じゃない、
洋服だって靴下だって
とママは別の文句を言いだした。
「それはそれ。これはこれ。
靴はそんなに散らかして脱がないもん」
パパも負けない。
実はぼくなんだよね。
パパが帰ってきたばかりの靴は
ホカホカしていて
ついつい、ちょいちょいしたくなる。
ぼくはいそいそと玄関に出かけ
パパの靴をクルクル回す。
「朝、仕事に行くときに
右と左があっちこっちに行ってるんだよ。
ママちゃんのはちゃんと揃えて置かれてるのに」
「あたしはそういう風に脱いでますから」
ごちゃごちゃと言い合いが続いている。
ガラっとリビングの引き戸があいた。
あ、と言うパパと目が合う。
「現行犯!」
「くっくくるくる犯確保!」
と言ってパパは飛び出してきた。