ぼくは今日ちょっと早起きをした。
そうしないと、トラさんにもジャックにも会えないから。
彼らは涼しい内に行動していて
暑くなったら日陰でひっそりしているみたい。
そして階段を降りるとママが窓辺にしゃがんで
トラさんに話しかけていた。
頑張って、食べろ、とかなんとか。
ぼくが降りてきたことに気が付くと
振り向いて脇に少しどいた。
トラさん。
トラさんはぼくに気づかず、一心不乱にご飯を食べている。
耳は、血だらけだった。
その血をめがけて、蚊が寄ってきている。
「これじゃ、ムヒを塗るわけにもいかないし
いい蚊の餌食だよ」
ママは眉間に皺を寄せ、うなだれる。
食欲があるうちは、いいと思うけど
食べられなくなったら、アウトだ
ママとぼくは顔を見合わせる。
トラさんは黙々とご飯を食べていた。