「いやぁすごい。後光が射して見える」
ママが目をパチパチさせて箱を見入っている。
なんだろう。小さな段ボール。
あんこぽっと?
ママのお店の1階は昔、大家さんが和菓子屋さんをしていた。
毎朝小豆の炊ける匂いを楽しみに出勤していたらしい。
でも大家さんも高齢になり、お店を閉めた。
それも10年近い前になる。
たしかばぁちゃんが亡くなって1年くらい後。
だからかママは小豆の匂いを嗅ぐと
異常に懐かしがる、ことをぼくは知っている。
こたつから小豆の匂いがしなくて残念だね。
ママはおもむろに箱を開けた。
あー!
かわいい!
「あんこ好き~、なんて話をしてたら
差し入れてくれたんだ。
相手が喜ぶものを渡せる人って凄い。
神々しいくらいだ。
有り難くて夢に見そうだ」
手を合わせて拝んでいるママは
食べたいけど恐れ多くて食べられない、とも言った。
食べなよ、食べて欲しくてくれたんだから。
でもしばらくはきっと
ばぁちゃんの写真の前に置かれるね。
その後、おさがりでやっと食べる。
一緒に食べれたころを思い出しながら。